先日、川崎で、勾留手続きを経る前に被疑者が逃亡したという事件がありました。
ただ、逃亡罪に問うことができないといったことで、ちょっとした話題になりました。
不正調査の結果、究極的には、逮捕・起訴されることがあります。ですので、ちょっとこの点にも触れてみたいと思います。
逮捕されて、すぐに逃亡すると、逃亡罪に問われ、罪が重くなると思われがちですが、必ずしもそうではない場合が存在します。
逃亡罪は、刑法第97条で、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。」と規定されています。
この規定は、「単純逃走罪」と言われています。
ところが、単に現行犯逮捕されただけの場合ですと、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」に該当しません。そのため、逃走しても「単純逃走罪」に問われることはありません。
弁護士の先生が痴漢冤罪に遭ったら「とにかく逃げろ」といわれる理由の一つは、単純逃走罪に問われないからです。
ところで、逃亡するということは、公務を妨害したのであるから、公務執行妨害になるのでは?と思われる方がいるかもしれませんが、結論から言いますと、単に逃げただけの場合には該当しません。
というのは、刑法第95条で、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されている通り、「暴行又は脅迫」という要件が必要となっているからです。
そのため、無理やり警察官の手を振りほどいたのではなく、単に逃亡しただけでは、公務執行妨害に問われることはありません。
通常は、逮捕されると、48時間以内に検察官に送致する手続きが取られます(刑事訴訟法第203条第1項)。
そして、検察官は、被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求することになります(刑事訴訟法第205条第1項)。
この、勾留の請求が認められ、拘禁されるまでは、逃走しても単純逃走罪に問われないことになります。
実は、これ以外にも、加重逃亡罪があり、こちらに問われる可能性はあるのですが…
これについて、刑法第98条には、「前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。」と規定されています。
この場合、「勾引状の執行を受けた者」とあり、先ほどの97条の場合と異なり、「逮捕された人」も含まれると解されているようです。
さらに「勾引状の執行を受けた者」について詳しく言うと、緊急逮捕後に逮捕状が発行され、その執行を受けた者も含まれると解釈されるものの、緊急逮捕されて逮捕状が発行される前の者や現行犯として逮捕された者は「勾引状の執行を受けた者」に含まれないと解せられているようです。
つまり、一旦、逮捕状が発行されると、逃走罪に問われることなく逃げ切るには、以下の条件を満たす必要があり、現実にはかなり難しいようです
○逮捕されてから勾留される72時間以内でないとダメ
○手錠を壊してもダメ
○腰縄を切ってもちぎってもダメ
○扉や鍵を壊してもダメ
○看守や警官などを突き飛ばしたり、殴ったりしても、威嚇して脅したりしてもダメ
○他人と通謀してもダメ
もっとも、こんなことをして逃げ切ったとしても、再度捕まってしまえば、量刑に影響を与えるのは想像に難くありません。
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アイウエオ (月曜日, 23 1月 2023 10:04)
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