本人は罪に問われなくても逃亡を手伝った人は罪に問われるのか?

 

川崎の被疑者逃走事件で、興味深いねじれ現象が起きています。

逃亡した被疑者は、逃亡罪に問われることがないのですが、逃走を手伝った同級生が罪に問われ、被疑者自身はその教唆を罪に問われる可能性があるというものです。

 

本ブログの主たるテーマの一つである不正調査から逃亡に発展することは、まずないのかもしれませんが、犯罪に関する知識としては知っておいた方がいいかもしれません。

 

そこで、今回は、この点について取り扱ってみたいと思います。

 

刑法には、犯人蔵匿・隠避罪というのもがあります。

刑法の第7章には「犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪」が規定されており、刑法第103条には、「犯人蔵匿等」として、以下の規定が存在しています。

 

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 

そして、「罰金以上の刑に当たる罪」には、選択刑として拘留や科料が規定されている場合も含まれるようです。

そして、この「罪を犯した者」について、昭和33年2月18日の判例では、

 

 

「罪ヲ犯シタル者」は犯罪の嫌疑によつて捜査中の者をも含むと解釈すべきものであるとの趣旨であつて、捜査官憲が犯罪嫌疑によつて捜査するに至らない段階の犯罪者を含まないとの趣旨までを判示したものではないと解するを相当とするのみならず、罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら官憲の発見、逮捕を免れるようにこれをかくまつた場合には、その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始まつているかどうかに

関係なく犯人蔵匿罪が成立するものと解すべきこと当裁判所の判例とするところである

 

と判断を下しています。

 

つまり、判例は、刑法第103条は、司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとする規定であるため、「罪ヲ犯シタル者」が、必ずしも真犯人であることを要しないという考え方を採用しています。

 

そして、この判例からは、捜査開始前であっても犯人蔵匿罪が成立することを示しています。

 

判例では、蔵匿とは、犯人に場所を提供してかくまってやることをいい、隠避とは、蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れさせる一切の行為を指称するとされています(大判昭5.9.18)。

そのため、真犯人の身代を仕立てたり、自分が犯人であると捜査機関へ名乗り上げたりすることも含まれることになります。

 

もっとも、この刑法103条には、「親族による犯罪に関する特例」として、刑法第105条が存在し、親族であれば、罪に問われない場合もあります。

 

具体的には、刑法第105条には、

 

前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

 

と規定しています。

 

つまり、親族であれば、このような犯人匿うのが人情であり、そのため、法がこの情に配慮した結果の規定であると言えます。

 

もっとも、今回の件のように、犯人が、自分を庇護するため他人を教唆して、蔵匿・隠避罪や証拠隠滅罪を犯させた場合,これらの罪の教唆犯が成立するであろうか問題になります。

この場合、庇護の濫用であるとして、105条の適用を否定して、教唆犯の成立を認めるのが判例、通説の考え方のようです。

 

野村宜弘公認会計士事務所

東京都港区赤坂2丁目18番4ビヴァーチェ赤坂303号

 

TEL:080-5477-0188

代表直通/受付時間7~24時)

 

email;yoshihiro.nomura@ms02.jicpa.or.jp

 

休業日

年中無休

 

対象地域

首都圏近郊:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県

全国対応いたします。

Google+
このエントリーをはてなブックマークに追加
Buzzurlにブックマーク

不正調査についてお気軽にご相談ください