被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その1)

金融商品取引法違反に関連し、犯則調査を行う際や外部調査委員会(第三者調査調査委員会)等による不正調査を実施する際には、種々の法律が絡んでくることになります。

 

犯則調査や不正調査で、関係する典型的な法律は、刑法や刑事訴訟法ですが、それ以外にも、民法や金融商品取引法など実に様々な法律が絡んでくることになります。

 

そのため、いろんな法律関係を理解することは非常に大事になります。

 

そして、しばらくは、すべての法律に先立ち、憲法についてみていきたいと思います。

 

その後、刑法、刑事訴訟法といった個別の法律について検討していきたいと思います。

 

というのは、憲法は、規範的な意味合いを持つため、すべての法律に、憲法上の問題が絡んでくるといっても、過言ではありません。

 

具体的には、憲法第98条で「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定されており、憲法に反する法律、命令その他の国家行為は「無効」となってしまうからです。

 

そのため、不正調査を行う上でも、憲法上どのような扱いがされているのかの観点が非常に重要になっています。

 

そして、まず、憲法の位置づけですが、近代国家における憲法は、「国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする憲法(注1)」ともいわれています。

 

つまり、歴史的に見て、国家権力は濫用され、人々を苦しめてきたという過去があることから、国民の権利や自由を守るためには、国家権力を制限する必要があるという要請があります。

 

そのことから、憲法には様々な規定が置かれています。


具体的には、基本的人権を保護することにあります。これをもう少し細かく見ていくと、
そもそも基本的人権の定義は、人権思想や人権保障のあり方などの変遷があるため、さまざまに理解されてきているので一概には言うのは難しいのですが、たとえば、憲法第11条には、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と規定されています。


また、同様に憲法の「第十章 最高法規」の第97条には、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と規定しており、基本的人権が非常に重要視されています。


そして、基本的人権は、「『人権』ないし『基本権』などとも呼ばれ、『信教の自由』、『言論の自由』、『職業選択の自由』などの個別的人権を総称することばである。(注1)」と言われています。


そして、この人権は、大きく、「自由権」と「参政権」と「社会権」の3つに区分され(注1)、犯則調査や不正調査に際して特に「自由権」が関わってきます。


ここで「自由権」とは、「国家が個人の領域に対して権力的に介入することを排除して、個人の自由な意思決定と活動とを保障する人権である。(注1)」と言われています。


この自由権は、「国家からの自由」とも言われており、人権保障という考えが出てきた当初から人権の中心をなしている重要な権利と言われております。


そして、この自由権は、「精神的自由権」や「経済的自由権」及び「人身の自由(身体の自由)」に細分されます。


このうち、犯罪捜査や不正調査で重要になるのは人身の自由(または身体の自由)です。


次回からは、この人身の自由(または身体の自由)についてみていきたいと思います。

 

注1:憲法 第4版(岩波書店 芦部信喜・高橋和之)より

【関連記事】

2014年1月26日  被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その6)

2014年1月13日  被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その5)

2014年1月12日  被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その4)

2014年1月12日  被疑者(容疑者)保護と憲法との関係について(その3)

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