最近の日本工業規格(JIS規格)の様式例に基づいた履歴書の雛形を見てみますと、私が、大学生時代に使用していた昔のタイプの履歴書の雛形と比較して随分と変わっているのに気が付くかと思います。
具体的には、本籍欄もなくなっていますし、家族構成・家族の職業の記入欄もなくなっていますし、賞罰欄もありませんし。
この中には、基本的人権を保護するために理解できる部分もあるのですが、不正発覚を恐れる雇用者側からしたら理解できない部分もあります。雇用者側から見てみれば非常に脅威です。
さらに、厚生労働所のホームページにある「公正な採用選考について」によると「応募者から戸籍謄(抄)本・住民票の写しを提出させる」行為も容認しておらず、基本的人権を保護する流れになっています。
無職になった出所者が、再犯をする確率が非常に高いのは紛れもない事実だと思います。
そのため、出所者の雇用確保は社会全体で解決しなければならない重大な問題ですが、だからと言って、情報を隠すことによって、雇用の機会を与えるものはいかがなものかと思います。
もちろん、社会的弱者にあるマイノリティを保護することは非常に重要な意味を持つのですが、たとえば、窃盗や、詐欺、覚せい剤など、再犯率が4割にも及ぶような罪を犯した者を経理部や財務部で進んで雇いたいと思う経営者は少ないでしょう。
万一、社員が違法行為をしてしまったら、会社の信用は、ガタ落ちになってしまいますし、会社の存続すら左右しかねませんし、その結果家族が路頭に迷うことになってしまうようでは、本末転倒です。
このあたりの考え方について、人権派と自称されている弁護士の先生にお会いして率直な意見を聞いてみたいです。
少なくとも、「先ず魁より始めよ」といって出所者を積極的に雇用している弁護士事務所の話は聞いたことがありませんし、積極雇用している弁護士事務所を検索しても見つかりませでした。
もっとも、採用に当たり、事前に採用希望者についていろいろ調査することが本当に違法かというと、別問題になるようです。
具体的には、会社が思想信条による採用を拒否することを合憲とした有名な三菱樹脂事件があります。
これについては、別の機会に検討していきたいと思います。
とはいえ、現在は、表だってバックグラウンドチェックはできなくなってきています。もちろん、合法的にバックグラウンドをチェックする良い方法はあるのですが、これについて詳しく記載すると時流に反するため書きません。個別にご相談ください。
というわけで、一般の会社にとって、採用時のバックグラウンドチェックが制限される傾向には変わりがないと思います。
したがって、今後、会社は、
「元犯罪者や犯罪予備軍を知らないうちに雇用してしまっている可能性がある」
という前提で臨まなければなりません。
そのうえで、社内不正を防止するには、内部統制を強化していくしかありません。
内部統制について、全く考えていなかった経営者の皆さんは、そろそろ、従業員の不正を防止するための方法を、まじめに考えるようにしてくださいね。
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